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選び方・手順 読了 約27分

Linux カーネルの脆弱性(ksmbd ほか・ZDI が修正前に公開)|ksmbd を使っているかの確認方法と、修正までの回避策【随時更新】

(最終更新:10 月 25 日 14:33)修正前に公開された Linux カーネルの脆弱性(ksmbd ほか)について、ksmbd を使っているかの確認方法と修正までの回避策、問い合わせ文のひな形を公式の情報で整理します。

「Linux カーネルのksmbd の脆弱性」「使っているかの確認方法と修正までの回避策」と書かれた文字だけの画像

最終更新:10 月 25 日 14:33(日本時間) 続報が出たら追記します。
すぐ見る:よくある疑問 / NAS・サーバーを任せている会社 / 技術的な詳細 / ksmbd を使っているかの確かめ方 / 修正が出るまでの回避策 / 問い合わせ文のひな形

ひとことで言うと

Linux の中心部分の弱点 5 つが、直る前に公開された。ファイル共有に ksmbd を使っているかの確認を(10 月 21 日)

  1. 多くのサーバーや NAS の中で動く Linux カーネル(Linux の中心部分)の弱点(脆弱性)5 つについて、くわしい報告が、直す前に誰でも読める場所に送られた。修正も CVE の番号も、まだそろっていない
  2. いちばん深刻なのは、ファイル共有の仕組み「ksmbd」の 2 つ。ksmbd を動かしているサーバーで、外からプログラムを実行される(乗っ取られる)おそれがある。よく使われる別のソフト Samba は、対象に挙がっていない
  3. NAS やファイルサーバーを任せている会社は、ksmbd と Samba のどちらを使っているかを保守会社やメーカーに聞く。ファイル共有はインターネットに出さない

どうすればいい?

よくある疑問と答え

  • 自社のサーバーや NAS は対象? ksmbd の 2 つは、ファイル共有に ksmbd を使っているときだけ関係します。Samba を使っているなら当たりません。どちらを使っているかは、保守会社やメーカーに聞くのが確実です。
    → ksmbd を使っているかの確かめ方
  • ksmbd とは? Samba とどう違う? どちらも、Windows と同じファイル共有(SMB)を Linux で使うためのソフトです。ksmbd は Linux カーネルの中で、Samba はカーネルの外で動きます。
    → ksmbd と Samba の違いの早見表
  • 何をすればいい? 使っていない ksmbd は止め、ファイル共有の受け口(445 番)がインターネットから届かないようにします。修正したカーネルが出たら更新します(この記事での整理)。
    → 修正が出るまでの回避策
  • もう攻撃されている? 1 つ(ZDI-CAN-33367)は、試すためのコードが報告と一緒に公開されています。ただ、CloudLinux は実際の攻撃に使われた報告は把握していないとしています。ほかの 4 つも、確かめた公式の発表に悪用の記載はありません。
    → 何が公開されたか(技術的な詳細)
  • いつ直る? 一部は、開発中のカーネルに修正が入り始めています。手元のサーバーに届くのは、使っている Linux の配布元が更新を出したときです。
    → 修正の状況と配布元の対応
  • 保守会社には何と聞けばいい? そのまま送れる問い合わせ文を用意しています。ksmbd と Samba のどちらか、外から届くか、修正の予定を一度に聞けます(この記事での整理)。
    → 問い合わせ文のひな形
  • レンタルサーバーやクラウドを使っている場合は? カーネルの更新は、サーバー会社が行うことが多いです。サーバー会社のお知らせやメンテナンスの情報を見ておきます(この記事での整理)。

詳しくは:何が公開されたか / ksmbd を使っているかの確かめ方 / 修正が出るまでの回避策 / 問い合わせ文のひな形

この記事では、Linux カーネルの脆弱性(ksmbd ほか、修正前に公開された 5 つの報告)について、トレンドマイクロの Zero Day Initiative(ZDI)の公開予定の一覧と、Linux カーネルのメーリングリストに送られた ZDI の報告と担当者の返信、Linux カーネルの文書、Red Hat・AlmaLinux・CloudLinux の発表、Samba の公式サイトだけをもとに、何が公開されたかと修正の状況を整理します。

あわせて、ksmbd を使っているかの確認方法、Samba との違いの早見表、修正が出るまでの回避策の表、保守会社・NAS メーカーへの問い合わせ文のひな形を、この記事での整理として載せます。攻撃の手順や再現のコードの細かい情報は載せていません。

NAS・ファイルサーバーを任せている会社がやること

社内の NAS やファイルサーバーの保守を外部の会社に任せている会社に向けた手順です。自分でサーバーを操作する必要はありません(この記事での整理)。

  1. ファイル共有に ksmbd と Samba のどちらを使っているかを、下の問い合わせ文のひな形で、保守会社や NAS のメーカーに聞く
  2. あわせて、ファイル共有(SMB・445 番)がインターネットから届く状態になっていないかを確かめてもらう
  3. 社員などがログインして使う Linux のサーバーがあるなら、権限昇格の件(ZDI-CAN-33367)への対応の予定も聞く
  4. レンタルサーバーやクラウドのサーバーは、サーバー会社のお知らせやメンテナンスの情報を見ておく

Linux のサーバーを自分で管理している場合は、下の技術的な詳細と確かめ方の手順に進んでください。ksmbd が入っているか・動いているかを確かめ、使っていなければ止めます。使っているなら、ゲストで入れる共有と SMB Direct(RDMA)の設定を見直します(この記事での整理)。

次に読む:同じ時期に出た社内の無線 LAN の機器の脆弱性 / 不正アクセスを相談できる IPA の窓口

何が公開されたか(技術的な詳細・システム担当者向け)

ここからは、サーバーを管理している担当者・エンジニア向けです。まず、出てくる名前の説明です。ZDI は、研究者が見つけた脆弱性の情報を買い取り、メーカーに知らせる取り組みで、トレンドマイクロ(TrendAI)が運営しています。ふつうは、メーカーが直すまで詳しい情報を公開せず、修正が出たあとに自分たちの発表(アドバイザリ)を出します。Linux カーネルは、Linux の OS の中心にあたる部分で、サーバーや NAS、ネットワークの機器の多くの中で動いています(この記事での整理)。

今回、いつもと違ったのは送り先です。ZDI は 10 月 21 日、Linux カーネルの 5 つの脆弱性の報告を、カーネルのセキュリティチームの宛先(security@kernel.org)に送り、同時に、誰でも読める公開のメーリングリスト(Linux カーネル全体のリストと、それぞれの機能の開発者のリスト)にも送りました。報告には、原因になっているプログラムの箇所の説明や、再現の手順が含まれていました。修正が出る前に、詳しい情報が誰でも読める状態になったということです(修正の無いまま知られた脆弱性は、ゼロデイ脆弱性とも呼ばれます)。

カーネルの側の反応です。安定版のカーネルの担当者は、ZDI の報告に「修正のパッチがなく、公開のリストに送られている」と返信しています。Linux カーネルの文書は、セキュリティの不具合は、まずその機能の担当者に送ってカーネルのセキュリティチームを宛先に加え、この段階では公開のリストに送らないよう求めています(すでに公開されている場合や、AI の道具などで誰でも同じものを見つけられる場合を除く)。

5 つの報告の内容です。ZDI の公開予定の一覧と、それぞれの報告の題名・CVSS をまとめました。

修正前に公開された 5 つの報告(ZDI の公開予定の一覧・ZDI の報告)
報告 場所 起きうること CVSS
ZDI-CAN-33774 ksmbd(カーネルの中の SMB サーバー)の、通信の種類を振り分ける処理 処理の順番の食い違い(競合状態)で、離れた場所からのプログラムの実行(リモートコード実行)につながるおそれ 9.0
ZDI-CAN-33549 ksmbd の SMB Direct(RDMA という高速な通信の仕組みを使う SMB)の処理 数の計算のあふれ(整数アンダーフロー)で、離れた場所からのプログラムの実行につながるおそれ 9.0
ZDI-CAN-34068 vmwgfx(VMware の仮想マシンの画面表示のためのドライバー) メモリの範囲外への書き込みで、ログインできる利用者が管理者の権限を取れる(権限昇格)おそれ 8.8
ZDI-CAN-34076 nvmet(NVMe のストレージをネットワーク越しに貸し出す、サーバー側の機能) 初期化していないメモリを使うことによる、情報の流出のおそれ 8.6
ZDI-CAN-33367 skbuff(ネットワークのデータを扱う仕組み)の skb_zerocopy という処理 ログインできる利用者が、読めるだけで書き込めないファイルの内容を変え、管理者の権限を取れる(権限昇格)おそれ 7.8

CVSS は、脆弱性の深刻さを 0 から 10 で表した値で、大きいほど深刻です。ksmbd の 2 つの 9.0 は、ネットワークの離れた場所から、ログインなしで狙える前提の評価です。ただし、攻撃の条件は厳しい(AC:H)と評価されています(ZDI の評価の記号の読み方は、この記事での整理)。

ksmbd の 2 つの条件は、報告に書かれています。ZDI の報告によると、ZDI-CAN-33774 を起こすには、処理の順番の食い違いをうまく起こすことと、ゲストで入れる共有があることが必要です。ZDI-CAN-33549 は、RDMA に対応した機器と、書き込める共有、SMB Direct の 3 つがそろっている必要があります。どちらも、試したカーネルは 7.3-rc3(Debian 13)で、影響を受ける版の範囲は報告に書かれていません。

CVE の番号がまだ無い理由です。Linux カーネルの文書によると、修正されていないカーネルの不具合には CVE の番号を自動では付けず、修正が安定版のカーネルに取り込まれてから付けます。CVE の番号で検索したり、CVE の番号で照合する検査の道具を使ったりしても、今は見つかりません(この記事での整理)。

悪用についてです。ZDI-CAN-33367 について、CloudLinux(レンタルサーバー向けの Linux の OS と、再起動せずにカーネルを直すサービス KernelCare を提供する会社)は、実際の攻撃に使われたという報告は把握していないとしています。ほかの 4 つについて、この記事で確かめた公式の発表に、悪用されたという記載はありません。

修正の状況と、Linux の配布元の対応(Red Hat・AlmaLinux など)

Linux カーネルの修正は、担当者の開発用の置き場(ツリー)に入ったあと、カーネルの本体(mainline)、安定版のカーネル、各 Linux の配布元(ディストリビューション)のカーネルの順に届きます。利用者のサーバーに届くのは、配布元が更新を出したときです(この記事での整理)。10 月 25 日に確かめた状況は次のとおりです。

報告ごとの修正の状況(メーリングリスト・Red Hat・AlmaLinux・CloudLinux)
報告 10 月 25 日までに分かっている修正の状況
ZDI-CAN-33774(ksmbd) ksmbd の担当者が 10 月 22 日、すでに直したと返信し、担当者のツリーにある修正(ksmbd: wait for negotiation before receiving another PDU)を示した。10 月 24 日、この修正を含む 7.4-rc1 向けの ksmbd の変更を、カーネルの本体に取り込むよう依頼した
ZDI-CAN-33549(ksmbd の SMB Direct) SMB Direct の担当者が、Linux 7.5 に向けた開発中のツリーで直っている可能性を示し、10 月 23 日に、まず小さな修正を先に入れることを提案した。ksmbd の担当者が修正のパッチを示し、SMB Direct の担当者が確認した
ZDI-CAN-33367(skb_zerocopy) ネットワークの担当者は、1 週間前に別の経路から修正つきの報告を受けていたと返信した。修正は 10 月 22 日に投稿され、10 月 23 日にネットワークの修正のツリー(netdev/net.git)に取り込まれた。AlmaLinux は 10 月 23 日、修正したカーネルをテスト用の置き場で公開した
ZDI-CAN-34068(vmwgfx) 安定版のカーネルの担当者が、修正のパッチがないため、できることがあまりないと返信した。修正の投稿は、この記事では確認できていない
ZDI-CAN-34076(nvmet) 安定版のカーネルの担当者が、修正のパッチがなく公開のリストに送られていると返信した。修正の投稿は、この記事では確認できていない

配布元ごとの情報です。Red Hat は 10 月 23 日に更新したナレッジ記事で、ksmbd の 2 つ(ZDI-CAN-33774・ZDI-CAN-33549)について、ksmbd のコードは出荷しているどの版にも入っていないため、Red Hat の製品は影響を受けないとしています。SMB Direct の件に必要な 2 つのカーネルの設定(CONFIG_SMB_SERVER_SMBDIRECT と CONFIG_RDMA_RXE)も、標準の Red Hat Enterprise Linux では無効だと書いています。

権限昇格の件(ZDI-CAN-33367)は、Red Hat と互換の無償の Linux の OS を作る AlmaLinux が 10 月 23 日に発表しています。AlmaLinux によると、AlmaLinux 8・9・10 のすべてが影響を受け、試すためのコード(PoC)のソースコードが報告と一緒に公開のリストに送られました。修正したカーネルはテスト用の置き場で公開され、確かめたあとに通常の置き場へ出すとしています。CloudLinux は 10 月 22 日、公開されたコードで、AlmaLinux 8・9・10、Debian 12・13、Ubuntu 24.04・26.04 で管理者の権限を取れたことを確かめたと発表しました。

Ubuntu・Debian のセキュリティの情報と、日本の JVN・JPCERT/CC の情報は、10 月 25 日の時点では見つかりませんでした。出たら追記します。

経緯

日付は、それぞれの発表やメールに書かれている日付です(協定世界時などで書かれているため、日本時間では翌日になるものがあります)。

Linux カーネルの未修正の脆弱性の公開の経緯(新しい順・公表日)
日付 できごと
2026 年 10 月 25 日 ZDI の公開予定の一覧で、5 つの報告(メーカーへの連絡は 10 月 21 日、期限は 2027 年 2 月 18 日)を確認した。CVE の番号はまだ付いていない(この記事の確認日)
10 月 24 日 ksmbd の担当者が、ZDI-CAN-33774 の修正を含む 7.4-rc1 向けの変更を、カーネルの本体に取り込むよう依頼した
10 月 23 日 Red Hat がナレッジ記事を更新し、ksmbd の 2 つは Red Hat の製品に影響しないとした。AlmaLinux が ZDI-CAN-33367 を直したカーネルをテスト用に公開した。ZDI-CAN-33367 の修正がネットワークの修正のツリーに取り込まれた。CloudLinux が CloudLinux 10 向けの KernelCare の修正を公開した。SMB Direct の件の小さな修正が担当者の間で示された
10 月 22 日 カーネルの担当者たちが ZDI の報告に返信した。ksmbd の担当者は ZDI-CAN-33774 は直したと返信した。ZDI-CAN-33367 の修正が投稿された。CloudLinux が、公開されたコードで管理者の権限を取れたことを確かめたと発表した
10 月 21 日 ZDI が、Linux カーネルの 5 つの脆弱性の報告を、カーネルのセキュリティチームと公開のメーリングリストに送った

ZDI が自分たちの発表をいつ出すかについてです。ZDI の報告の末尾には、報告した日から 120 日以内に直すようメーカーに求め、期限までに修正が出なければ、ZDI が回避策を添えた限られた内容の発表を出すと書かれています。公開予定の一覧の期限(2027 年 2 月 18 日)は、この 120 日にあたります(この記事での整理)。

自社の NAS・ファイルサーバー・Linux のサーバーが ksmbd を使っているかの確かめ方

ここからは、ksmbd の 2 つに当てはまるかを判断するための整理です(この記事での整理)。ksmbd の 2 つは、ksmbd を動かしているときにだけ関係します。Linux のサーバーでファイル共有をしていても、Samba を使っているなら、今回の ksmbd の報告の対象ではありません。Windows のサーバーのファイル共有は、Linux カーネルの問題とは別のものです。

NAS・保守を任せているサーバーの場合

NAS の多くは中で Linux が動いていますが、ファイル共有に ksmbd と Samba のどちらを使っているかは製品や版によって違いうるもので、管理の画面からは分からないことが多いです。自分で調べようとせず、下の問い合わせ文のひな形で、NAS のメーカーか保守会社に聞くのが確実です(この記事での整理)。

自分で管理している Linux のサーバーの場合

SSH で入った画面で、上から順に確かめます。1 番目と 2 番目は Red Hat のナレッジ記事に載っている確かめ方で、3 番目以降はこの記事での整理です。分からなければ、無理に操作せず、保守会社に聞いてください。動いている Linux カーネルのバージョンは「uname -r」で確認できます。

ksmbd を使っているかの確かめ方と、結果の読み方(Red Hat・この記事での整理)
確かめること 打つコマンド 結果の読み方
1. カーネルに ksmbd が組み込まれているか grep SMB_SERVER /boot/config-$(uname -r) 「CONFIG_SMB_SERVER is not set」か、何も出なければ入っていない。「CONFIG_SMB_SERVER=m」か「=y」なら入っている。「CONFIG_SMB_SERVER_SMBDIRECT=y」があれば SMB Direct も入っている
2. ksmbd のモジュールがあるか modinfo ksmbd 「Module ksmbd not found」と出れば、モジュールとしては入っていない
3. 今、ksmbd が読み込まれているか lsmod | grep ksmbd 何も出なければ、モジュールの ksmbd は読み込まれていない。1 番目で「=y」(カーネルに直接組み込み)だった場合は、この方法では分からないので 4 番目で確かめる
4. ksmbd のサービスが動いているか ps -e | grep ksmbd ksmbd.mountd(ksmbd の利用者側のプログラム)や、ksmbd という名前のカーネルの処理が出れば、ksmbd が動いている
5. ファイル共有の受け口(445 番)を何が開けているか sudo ss -ltnp | grep :445 「smbd」と出れば Samba。445 番が開いているのにプログラムの名前が出ない場合は、カーネルの中の ksmbd の可能性がある
6. SMB Direct(RDMA)を使える機器があるか rdma link show 何も出ないか、コマンドが無ければ、RDMA の機器は使っていないと考えられる。データセンター向けの高速な機器で使う仕組みで、ふつうの社内のサーバーで使うことは少ない

ksmbd が動いていた場合は、次に設定を確かめます(この記事での整理)。ksmbd の設定は ksmbd.conf というファイル(パッケージで入れた場合は /etc/ksmbd/ksmbd.conf のことが多く、Linux カーネルの文書の手順で入れた場合は /usr/local/etc/ksmbd/ksmbd.conf)に書かれています。ゲストで入れる共有があるか(guest ok などの設定)と、書き込める共有があるかを確かめます。設定の書き方は ksmbd.conf の説明書(man ksmbd.conf)で確かめてください。

ksmbd とは|Samba との違いの早見表

ksmbd と Samba は、どちらも Linux で Windows と同じファイル共有(SMB)を提供するソフトですが、動く場所が違います。Linux カーネルの文書と Samba の公式サイト、Red Hat のナレッジ記事の説明をもとに、違いを並べました(表にまとめたのはこの記事での整理)。

ksmbd と Samba の違い(Linux カーネルの文書・Samba・Red Hat をもとにした、この記事での整理)
項目 ksmbd Samba
動く場所 Linux カーネルの中。ファイルの読み書きなど速さに関わる処理をカーネルで行い、利用者のアカウントの管理などは ksmbd.mountd という利用者側のプログラムが受け持つ カーネルの外で動く、利用者側のプログラム。ファイル共有の中心は smbd というプログラム
カーネルに入った時期 2021 年に Linux カーネルに入った(Red Hat の説明)。カーネルの設定の画面では「EXPERIMENTAL(試験的)」と表示される カーネルとは別のソフト。1992 年から公開されている
設定のファイル ksmbd.conf(ksmbd-tools という道具で管理する) smb.conf
SMB の版 SMB2.1・SMB3.0・SMB3.1.1。脆弱な SMB1 は意図して対象外にしている SMB と Active Directory の機能を幅広く備える
Active Directory アクセス権の仕組みは単独のサーバー向けで、ドメインのメンバーには対応していない(Linux カーネルの文書) ドメインコントローラーにも、メンバーのサーバーにもなれる
SMB Direct(RDMA) 対応している(今回の ZDI-CAN-33549 はこの部分) 今回の報告では触れられていない
今回の報告 ZDI-CAN-33774 と ZDI-CAN-33549 の対象 対象として挙がっていない

読み方の補足です。Samba を使っているサーバーでも、カーネル自体は今回のほかの 3 つ(権限昇格など)に関係しうるので、カーネルの更新は別に必要です。また、Samba の脆弱性は Samba の発表で別に追います(この記事での整理)。

修正が出るまでの回避策(公式どおりの一覧)

修正したカーネルが届くまでの間にできることを、公式に書かれている条件と回避策のとおりに並べました。表にまとめたのは、この記事での整理です。

報告ごとの条件と、公式に書かれている回避策(ZDI の報告・Linux カーネルの文書・Red Hat・AlmaLinux・CloudLinux)
報告 公式に書かれている条件 公式に書かれている回避策と、その出典
ZDI-CAN-33774(ksmbd) 処理の順番の食い違いを起こすことと、ゲストで入れる共有(ZDI の報告) 回避策としての記載はない。Linux カーネルの文書には、ksmbd を止める方法(ksmbd.control -s で利用者側とカーネル側の両方を止める)が載っている。使っていない ksmbd を止めることと、ゲストで入れる共有をなくすことは、条件から考えた この記事での整理
ZDI-CAN-33549(ksmbd の SMB Direct) RDMA に対応した機器、書き込める共有、SMB Direct の 3 つがそろうこと(ZDI の報告) Red Hat は、必要な 2 つの設定(CONFIG_SMB_SERVER_SMBDIRECT・CONFIG_RDMA_RXE)が標準で無効のため、標準の Red Hat Enterprise Linux は影響を受けないとしている。SMB Direct を使っていない場合に有効にしないことは、この記事での整理
ZDI-CAN-33367(skb_zerocopy) サーバーにふつうの利用者としてログインできること。試すためのコードは、権限のない利用者が自分用の名前空間(user namespace)を作れることを使う(AlmaLinux・CloudLinux) AlmaLinux は、IPsec を使っていなければ esp4・esp6 というモジュールを読み込ませない設定を示している(IPsec を使う環境では通信が止まる)。CloudLinux は、user.max_user_namespaces を 0 にする設定を示している(ふつうの利用者が動かすコンテナなどが使えなくなる)
ZDI-CAN-34068(vmwgfx) サーバーにログインできる利用者が使う、権限昇格の問題(ZDI の報告の評価)。VMware の仮想マシンの画面表示のドライバーの問題 この記事で確かめた公式の情報には、回避策の記載はない
ZDI-CAN-34076(nvmet) 公式の情報に条件の記載はない。NVMe のストレージをネットワーク越しに貸し出す機能(nvmet)を使っているサーバーに関係すると考えられる(この記事での整理) この記事で確かめた公式の情報には、回避策の記載はない

回避策を使う前の注意です。どの回避策も、使っている機能が止まることがあります。とくに esp4・esp6 を止める設定や user.max_user_namespaces を 0 にする設定は、VPN やコンテナを使っているサーバーで影響が出ます。保守会社と相談してから行い、修正したカーネルに更新して再起動したら、元に戻すかどうかも決めておきます(この記事での整理)。

ksmbd を使っているサーバーで、修正が届くまでにやること

公式の条件をもとに、作業の順に並べました(順番と、発表に無い補足は この記事での整理)。

  1. ksmbd を使う必要があるかを決める。Samba で足りる、使っていないなら、ksmbd を止めて、起動のたびに動かないようにする
  2. 使い続けるなら、ゲストで入れる共有をなくし、共有ごとに利用者とパスワードを決める
  3. ファイル共有の受け口(445 番)が、インターネットや信頼できないネットワークから届かないよう、ルーターやファイアウォールで閉じる。外から使うときは VPN を通す
  4. SMB Direct を使っていなければ、有効にしない
  5. 使っている Linux の配布元のセキュリティのお知らせを見て、修正したカーネルが出たら更新し、再起動する

保守会社・NAS メーカーへの問い合わせ文のひな形

NAS やファイルサーバーの保守を任せている会社、または NAS のメーカーのサポートに、そのまま送れる文面にしました(この記事での整理)。[ ]の中は自社に合わせて埋めます。ksmbd と Samba のどちらを使っているかと、外から届くかどうか、修正の予定を一度に聞くのがこつです。

ひな形(この記事での整理)

件名:Linux カーネルの脆弱性(ksmbd・ZDI-CAN-33774 ほか)への対応状況の確認のお願い

[会社名] [担当者名]様

いつもお世話になっております。[自社名]の[名前]です。2026 年 10 月 21 日に、トレンドマイクロの Zero Day Initiative(ZDI)から、Linux カーネルの未修正の脆弱性の報告(ksmbd の ZDI-CAN-33774・ZDI-CAN-33549 ほか)が公開のメーリングリストに送られたと知りました。お願いしている[NAS の型番・サーバーの名前]について、次の点を教えていただけますでしょうか。

  1. ファイル共有(SMB)に、ksmbd(Linux カーネルの中の SMB サーバー)と Samba のどちらを使っているか
  2. ksmbd を使っている場合、ゲストで入れる共有や、SMB Direct(RDMA)を使う設定があるか
  3. ファイル共有の受け口(445 番)が、インターネットから届く状態になっていないか
  4. 修正が出るまでの対応(止める・設定を変えるなど)の要否と、修正を含むファームウェアやカーネルの提供・適用の予定
  5. 社員などがログインできる Linux のサーバーがある場合、権限昇格の件(ZDI-CAN-33367)への対応の予定
  6. 今回の作業が、保守の契約の範囲に入るか、別の費用になるか

対応が終わりましたら、適用したファームウェアやカーネルの版をお知らせいただけますと助かります。お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。

返事が来たあとの読み方です(この記事での整理)。

  • 「Samba を使っている」 ksmbd の 2 つには当たらない。返事の日付と内容を控えておき、カーネルの定期の更新が続いているかだけ確かめる。
  • 「ksmbd を使っている」 ゲストの共有と SMB Direct の有無、445 番が外から届くかを確かめてもらい、修正の予定日を決めてもらう。止められるなら、修正が届くまで止める案も相談する。
  • 「メーカーに確認中」 いつまでに返事をもらえるかを聞いておく。その間は、445 番を外から届かないようにしておくと安心。
  • 「ファームウェアの更新で直す」 更新の予定日と、更新の間にファイルを使えなくなる時間を聞いておく。更新の前に、大事なファイルのバックアップがあるかも確かめる。

次に読む:サーバーの土台のソフトの脆弱性(Node.js の Brotli) / 同じ時期に出た PHP の重大な脆弱性

自社で見直すこと

今回は、修正も CVE の番号も無いうちに、詳しい情報が公開されました。CVE の番号やメーカーのお知らせを待つだけでは、気づくのが遅れることがあります。社内のファイル共有は、ふだん目に入らないぶん、どの仕組みで動いているかが分からなくなりやすいところです(この記事での整理)。

  • ファイル共有の仕組みを書き出す NAS やファイルサーバーの型番、ファームウェアや OS の版、ファイル共有のソフト(ksmbd・Samba・Windows など)、保守の連絡先を一覧にしておく。今回のような名前が出たときに、すぐ当たりがつけられる。
  • ファイル共有を外に出さない ファイル共有の受け口(445 番)を、インターネットから直接届かないようにしておく。外から使う場合は VPN を通す。修正が間に合わないときの守りになる。
  • 更新を誰がいつ行うかを決めておく NAS のファームウェアやサーバーのカーネルの更新が、保守の範囲に入っているか、入っていないなら誰に頼むのかを決めておく。更新の前のバックアップの手順も一緒に確かめる。

ほかの最近の出来事は 「最近のサイバー攻撃と対策」、続けて備える体制の考え方は 「ホームページの保守」 にまとめています。

作り方は 3 つ|完成済み・自作・オーダーメイド

作り方はどれでも選べます。優劣ではなく、向いているケースが違います。

  • オーダーメイドで作る(制作会社に依頼) 要件を渡せば設計から任せられます。自社に合わせて一から作りたい場合や、撮影・原稿まで任せたい場合に向きます。SITE PICK でもオーダーメイド制作の相談を受け付けています。
  • 自分で作る(自作) 費用は抑えられます。そのかわり、Linux カーネルのような土台のソフトの脆弱性の情報を追い、更新を公開後もずっと自分で続けることになります。
  • 完成済みのサイトから選ぶ(完成済み) 構成・更新の仕組み・入口が組まれた状態を実物で確かめ、社名・写真・文章を差し替えて公開します。完成形を先に確認してから決めたい場合に向きます。この記事の集計は、その実際のサイトのデータです。

この記事のデータについて

参考にした外部の資料(26 件)

  1. ZDI(トレンドマイクロの Zero Day Initiative の公開予定の一覧 Upcoming Advisories)zerodayinitiative.com・2026.10.25 確認
  2. ZDI-CAN-33774: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  3. ZDI-CAN-33549: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  4. ZDI-CAN-33367: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  5. ZDI-CAN-34068: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  6. Re: ZDI-CAN-34076: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  7. Re: ZDI-CAN-33774: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  8. Re: ZDI-CAN-34068: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
すべての出典を見る(ほか 18 件)
  1. Re: ZDI-CAN-33774: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  2. Linux カーネル(ksmbd の担当者のツリーの修正 68f410faedaf・kernel.googlesource.com のミラー)kernel.googlesource.com・2026.10.25 確認
  3. Re: ZDI-CAN-33549: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  4. Re: ZDI-CAN-33549: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  5. Re: ZDI-CAN-33549: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  6. Re: ZDI-CAN-33549: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  7. [GIT PULL] ksmbd server update for 7.4-rc1lore.kernel.org・2026.10.25 確認
  8. Linux カーネルのメーリングリスト(ZDI-CAN-33367 の修正の取り込みの知らせ)lore.kernel.org・2026.10.25 確認
  9. Linux カーネルのメーリングリスト(ZDI-CAN-33367 の修正のパッチ)lore.kernel.org・2026.10.25 確認
  10. Re: ZDI-CAN-33367: New Vulnerability Reportlore.kernel.org・2026.10.25 確認
  11. Red Hat(Red Hat のナレッジ記事 Red Hat response to Zero Day Initiative ksmbd vulnerabilities)access.redhat.com・2026.10.25 確認
  12. AlmaLinux(AlmaLinux のブログ ZDI-CAN-33367: Patched kernels available in testing)almalinux.org・2026.10.25 確認
  13. CloudLinux(CloudLinux のブログ ZDI-CAN-33367)blog.cloudlinux.com・2026.10.25 確認
  14. Security bugs — The Linux Kernel documentationdocs.kernel.org・2026.10.25 確認
  15. CVEs — The Linux Kernel documentationdocs.kernel.org・2026.10.25 確認
  16. Linux カーネルの文書(KSMBD - SMB3 Kernel Server)docs.kernel.org・2026.10.25 確認
  17. Samba - opening windows to a wider worldsamba.org・2026.10.25 確認
  18. smbdsamba.org・2026.10.25 確認

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